「あーなんで人間って羽がついてないのかな?」
無意識に発してしまったその言葉に、ナルト君はこっちを向いた。
タカミヲユクモノタチ
「急になんだってばよ?ヒナタ」
その時ナルト君は、ベットに横たわる私の隣でズボンをはいていた。
「これ見てたら、かっこいいな〜って。」
私が広げているのは、昨日帰って来たナルト君のお土産。
あんまり厚くはないけど、花とか木とか動物などを撮った写真集のようなもの。
その最後のページには、風に乗って高く高く飛ぶ鳥の姿があった。
「ん〜、気に入ってくれたのは嬉しいんですけど、ヒナタさん。
早いとこ服着てくれません?我慢できそうにないんで。」
今私は、うつ伏せになって本を読んでいるが、
何故か(笑)裸で掛け布団を被っているだけ。
「昨日あんなにシたのに?結構高くついたかもね。この本。」
そういうと、ナルト君に向かっておいでおいでをする。
「ん?何?」
近づいてきた顔を両手で掴み唇を重ねた。
・
・
・
「やっぱり羽ほしいな〜。」
後頭部に隣で寝る人の腕を感じながら。
「そんなに欲しいの?」
私と同じく上を向いているナルト君の声。
「そしたら、ナルト君が恋しくなったらいつでも行けるでしょう?」
「・・・。」
突然の沈黙。
不審に思って、目だけで横を見る。
顔は反対を向いていて見えなかったけど、
金髪の中に少しだけ見える耳は真っ赤だった。
「・・・もしかして、照れてるの?」
「そ、そんなことないってばよ。」
声が裏返っているが、敢えて何も言わないでおいた。
「でも、かっこいいよね。これ。」
そう言って、枕もとの本を目の前に広げる。
「自由って感じ?」
「『例え、自由に空が飛べたとしても、休む場所も、たどり着く場所もなかったなら、
鳥は、羽を持ったことさえ悔やむかもしれない。』」
「それ、誰の言葉?」
すらすらと、流れ出た言葉に驚きながら。
「俺の言葉。」
「嘘でしょ?」
何のためらいもなく、考えるより先に言葉が出た。
「酷いってばよ。ヒナタさん。」
「ゴメン。ゴメン。」
慌てて謝罪の言葉をかける。
そりゃ、ヒナタほど頭は良くないけどさ〜、などなど、
そんなことを言いながらしがみついて来る。
「で、それは誰の言葉?」
頭を撫でる。
「シカマルの彼女。」
「テマリさん?」
「そ。」
脳裏に気の強そうな顔が浮かぶ。
「生まれが砂漠だろ。たまに渡り鳥とかが力尽きて死んでるんだって。」
「・・・重いね。」
私がそう言うと、ナルト君は抱きつくのをやめて、空いている手に頭を乗せて上を向いた。
「でも、それが今までずっと続いてきた事なんだってばよ。じいちゃんが生まれるよりもずっと昔から。」
淡々と続く。
「それは、他の人がどーこー出来る事じゃなくて、昔に自分達が決めたことだし、
鳥も死ぬかもしれない事もわかっていると思う。それでも飛ぶ。
生きるための『覚悟』を乗せて飛ぶ。だからその姿は美しい。
『覚悟』があるから、鳥はどこまでも飛んでゆける。」
「・・・『覚悟』」
口に出して解った。その言葉の含む意味が。
「ナルト君。」
「ん?」
「私、この里で待ってるからね。」
「ん。」
私は、口の中で何度も繰り返した。
ねえ、ナルト君、ずっと待っているからね。