昔、私の世界は古めかしい大きな屋敷だけだった。
その中で見た夢は、憧れとなってそのまま私の夢と重なった。
人は、大きくなるにつれ、自分の意思とは関係なく世界がそれだけでないことを知らされる。
空気を送り込まれ続ける風船のように、私の世界は広がって、今ではどんなに必死に伸ばしても この手であなたを掴めない。


歩む道


任務中、時にはいつもチームを組む仲間でさえ怯む横顔。
傷だらけで、ごつごつしている、大きな手のひら。
任務を終えた彼を迎えにいった帰り道。
夕日が影を長くする。
「お疲れ様。」
「ただいま。」
他愛も無い、いつものやり取り。
疲れているはずなのに、それを微塵も見せない。
自分を気遣う優しさをうれしく感じる。
任務の後に交わされるやり取り、向けられる笑顔。
でも、ちょっとだけ寂しかった。
そこにいつもある『優しさ』は、自分と彼を隔てる柔らかい膜のような物だったから。

「なんか変わったことあった?」
「ん〜、そういえばね〜・・・」
私にとって、ナルトくんは、ヒーローなんだと思う。
昔、本で読んだ正義の味方。
顔も知らない人たちを守ることに、自分を賭けられる人々。
憧れと、少しだけ矛盾を感じたのを覚えている。
「ねえ、ナルトくん、私に何か出来ること無いかな?」
「突然、何だってばよ?」
小さい頃、みんなを守るヒーローに憧れていた。
今、目の前にいる人は、ヒーローだと思う。
私を含め、顔も知らない人々の住む里を守る。
そして、それに生涯をかける。
私には、出来なかった。
彼には、その力があった。
でも、それに頼るのは、嫌だった。
私も、自分の力で生きていきたかった。
私も、その存在を目指した。
『この人のように、この人のような。』
だからこそ、私も何かしたかった。
「私って、ナルト君みたいなこと出来ないから。せめて、私に出来ることをね、したいの。」
そんな私の一言に、彼は・・・・・・・・・笑った。
優しく、微笑むように。

私だけに向けられた、優しい微笑み。
心の、最後の壁が壊された気がした。
心の底に隠していた気持ちが、止め処なく流れ出しそうだった。
今、彼は言ったのだ。
『あなたは、守られる側の人間だ』・・・と。
「ん〜、べつにないってばよ。」
「・・・じゃあ、今日はナルトくんの好きなもの作ってあげるよ。」
人は、知らないうちに岐路に立たされる。
そして、私は、岐路が在ったことさえ気付けなかったのかもしれない。
「マジッ!?じゃあ、・・・ラーメンとヒナタ!」
「後者は、却下します。」
今にも、噴き出しそうなモノを我慢する。
少なくとも、この人の前で泣いてはいけない。
醜い言葉を、投げつけてはいけない。
「・・・けちっ。」
「そーゆーのは、ケチと言いません。」
目の前にいる人は、ヒーローだから。
「まあ、いいってばよ、それよりラーメンラーメン。」
「はいはい。」
私は、これからも生きていく。
私の手を握る、この人に守られて。
そして、私は『それ』を当然と思わなくてはならない。
それこそが、私たち守られる側の生きる道だから。


言い訳。やっぱり、ヒナタさんの一人称、ワンパターンかなと、思いつつ。
次は、ナルト視点か、裏になると思います。っていうか、する。そろそろ皆さんこの パターン飽きたでしょうから。暗いしね。
『止められないモノ』を、ちょっと違う感じで。っていう感じです。
・・・軽くスランプです。ヘルプミー。
執筆者/海影


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