ケンカをした…。
初めてのケンカ。
「どうして…。」
後悔の念でうずくまる。
足を抱え、頭を沈める。
「どうして、なんだろ…。」


流水


中忍になれた…!
一足先に中忍になった彼とようやく肩を並べられるようになり、素直に嬉しかった。
中忍合格の通達が届き、早々に登録を済ませて彼の所に直行した。
合格発表が今日なのは知っていたらしく開口一番で聞いてきた。
「中忍…なれたよ…。」
トレードマークのベストを着て見せると
似合ってる、と嬉しそうに言ってくれた。
しかし、いつもの彼に比べてどこか元気がないように思えた。
「どうか…したの…?」
先刻任務から帰ってきたばかりでまだ疲れているのかもしれない。
それなのに一人で浮かれてしまっている自分が少し恥ずかしかった。
「何でもないってばよ…。」
「で、でも…大丈夫?」
「おう…大丈夫だってばよ。」
それならいいんだけど、の念押しをするにはしたが、やはり元気がない。
「あ、あのさ…。今回はどんな任務だったの…?」
「んー?」
どこか上の空である。
一楽でメニューを頼んでから来るまでの間に上の空の時があったが
今回のはその時の比ではない。心ここにあらず、を体現している。

「ヒナタさ、何で中忍になったんだってばよ。」
「え…?」
不意の質問に目を丸くしてしまう。
「中忍になるとさ、下忍の頃とは比べ物にならないくらい危険な任務があるんだってばよ。」
先輩としてのアドバイスなのだろうか、まだボンヤリした雰囲気である。
だが、こんな状態で言われても説得力がない。
「怪我…とかも増えるんだぜ…。」
「え、うん…。ナルトくん見てるからわかるよ…。」
「そっか…。」
どこか覇気のない話し方。彼らしくもない。
何かあったに違いない。
聞いてみたい。本来ならここで強引にでも聞くべきなのだろうが私にはできない。
もしかしたら聞かれたくない理由なのかもしれない。
そんな事を聞く勇気を私はまだ持って…いない…。
もどかしい…このもどかしさの原因は知っている。
そしてそれを取り除く方法も…。
だがそれができない。
そう思うと少しうつむいてしまう。
…こんな自分を変えたく中忍試験を受けたのに…。
私は何も、変わってないのかな…。
そう思うと余計にうつむいてしまう。
これではダメだ!
中忍になり、変わったのを見せたくて、意を決して聞くことを決心した。
「あのさ、ヒナタ…。」
「は、はい!」
決心した瞬間に話しかけられ素っ頓狂な声で返事をしてしまった。
「中忍なんのさ、辞退しないか?」
「え、もう登録してきちゃったし…。ベストだって、ほら…。」
腕を広げピッタリの中忍ベストを見せる。
「お、俺さ!ヒナタが任務で怪我するのイヤだ!」
意を決したような口調で叫ぶように言う。
「でも…中忍なんだから少しくらいは…」
「でもさでもさ!ヒナタを危険に遭わせたくないんだってばよ!」
私の言葉を遮るような…いや、遮りたかったのかもしれない。
「ヒナタが怪我すんのなんて、俺イヤだってばよ!」
その言葉…そっくりそのまま返してあげたい。
「下忍ならさ!激しい戦闘なんて滅多にないんだし…!」
「でも、中忍になるのは私が決めたことだし…。」
自分を強く主張することのなかった私が彼に会い、彼に触れ…次第に変わったのだ。
そして中忍になった。そんな自分を彼に認めてほしかった。
「ヒナタを危険に遭わせたくないんだってばよ!」
「そ、そんな…気持ちは嬉しいけど…その…。」
心配してくれるのは嬉しい。だが私はいつも貴方の心配をしている。
「わかるなら何で!」
「私だってナルトくんが危険な任務に行くのは…。」
「それは!火影になるためなんだし!里に連中に俺の存在を認めさせるためで!ヒナタだって応援してくれてるじゃないか!」
「そうだけど…それは…。」
「俺は大丈夫だってばよ!ヒナタは無理するな!」
その瞬間、私の中で何かが弾けた。
「そんな…!一方的過ぎる…!」
珍しく声を荒げた私を目を丸くして見つめる彼。
狐につままれたような顔をしている。
声を荒げてみたが、後の言葉が続かない。
どうしよう、と思うと余計にどうしていいのかわからなくなってきた…。

(ど、どうしよう…。)

頭の中でグルグル考え込むと自然と涙が出てきた。
どうしてだろう…何故涙が?
余計に頭の中がグルグルする。
「ヒナタ…あのさ…。」
そんな状態に話しかけられ、頭の中のグルグルが加速する。
今にも泣き出しそうな状態になってしまい
そんな状態を見られたくなくて逃げ出してしまった。
私の名を呼ぶ声がだんだん離れる。
(何やってんだろ…私…。)


「何が、いけなかったのかな…。」
涙が一杯の顔で空を仰ぐ。
雲が自由気ままに流れている空。

下忍の頃は自分を変えたくて、彼を追って中忍になった。
いずれ…彼は私より早く上忍になるだろう。
そうしたら私はまた彼を追って上忍になるのだろうか。
そして彼はきっと火影になる。なら、私は…?
火影になった彼を追って私も火影に…?でも何の為に…?
明確な答えが見つからないままの自問自答が続く。

下忍の頃の私は自分を変えたかった。
今はその頃の確かな気持ちを知りたい。
―グルグル悩んでしまった時は初心に戻るのが一番よ?
下忍の頃の担当上忍に言われたのを思い出す。
私にとっての初心…原点は何だろう…。
彼の原点は…たぶん下忍になった演習場だろう。

ボンヤリ考えていると演習場に向かっているのに気付いた。
一番最初の中忍選抜試験…あの時、ここで会ったんだっけ…。
遠い過去のように思い出すと自嘲気味の笑みがこみ上げてくる。
いつまでも過去のことを想っている私と違って彼は前を見ているだろう。
自分が情けなくなり、深い溜め息と共にうつむいてしまう。


「えっと…ヒナタ…?」
聞きなれない遠慮がちな声…。
咄嗟のことにビックリし、瞬間的に彼から離れようとしてしまった。
「その…ゴメンな…。俺ってば我侭過ぎたってばよ。」
「で、でも…ナルトくんは私のこと心配してくれてたんだし…。」
あんなことの後でも彼のフォローをしてしまう。
「…そりゃヒナタが無茶すんなら心配だってばよ…。」
「私の普段の気持ち…わかった、かな…。」
「はい…。」
やけに素直なのは心配する側の気持ちを痛感したからだろう。
「俺ってばさ…今まで人の心配なんてしたことなかったんだってばよ。」
照れ隠しなのか目線が泳いでいる。
「そのさ、俺ってばずっと一人だったし…。でもさでもさ!今はヒナタがいて…もうあの頃とは違うんだってばよ。」
不自然な目線で懸命になっている。
イタズラの言い訳なら言い慣れているのかもしれないが
こういうのは慣れていないようだ。
言葉の流れが不自然だ。所々で詰まっている。
普段なら私の方が言葉に困るのだが
珍しく彼が言葉を選び、言葉に困っている。
そう思っていると不意に笑みがこぼれる。

「もう…一人じゃないからね…。」

そうだった。私も、もう一人じゃない。
雲のように自由気ままな彼を見つめ、支えることが―


タイトルから浮かんできたSSです。いやはや…。
当初のプラン(?)から紆余曲折を経てこんな感じになりました。。
名残はタイトルだけでしょう。

前編−行雲−
使いたかった単語は「等価交換」です。錬金術です。(ぇ
同年代の野郎同士にしか分からない相談事。
ナルヒナと同様にシカいのは標準装備です。
しかし、このお話はCPで言うとどうなるのでしょう?

後編−流水−
落ち込んじゃうヒナタ嬢に言い訳ナルトくん。
それでヒナタ嬢が中忍になりました。
ところで中忍→上忍ってどうやってなるんでしょう?
上忍選抜試験…なんてやらないよなぁ…。

これってあれですよね。
ダブルヒーロー・システム!(言ってみたかっただけ)

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